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アルバムの女王(2)

10月1日の天地真理さんデビュー40周年祝賀会はすばらしい会になったようですね。真理さんはとても元気になられ、「水色の恋」は心こめたすばらしい歌だったということですね。太田裕美さんもかけつけ、森光子さんからもメッセージがあったとか。真理さんにとって最高の記念日になったのではないでしょうか。そして参加されたファンのみなさんにとっても忘れられない日になったと思います。皆さんの報告を読ませていただいて、参加できなかった私さえこんなにも素晴らしい会で真理さんのデビュー40周年を祝うことができたことがうれしくてたまりません。真保さんはじめファンクラブスタッフの皆さんの周到な準備のおかげと思います。ありがとうございました。

さて、前回、天地真理さんとピンクレディー、松田聖子さんという活躍した時代が違う歌手を単純にレコード売り上げ枚数だけで比較できるだろうかという疑問を掲げました。
今回はできるだけ実態に合った比較ができるような試みをしてみようと思います。

私がいま入手している資料は十分ではありません。したがって大雑把な比較になりますが「オリコン1位獲得アルバム」のデータがありますのでこれを中心にを比較したいと思います。
ただこの資料には売上枚数が入っていません。そこで「年間売上ベスト10」のデータを合わせて使います。ただ双方に出てくるアルバムにずれがあるため売上枚数がわからないものもありますが、わかったものを比較します。
その際、物価の変化を調整するために物価上昇率を加味します。1970年から現在まで物価は平均で3~4倍になっています。ところが、この間レコードの価格はあまり変わっておらずLPなら2000円前後でした。レコードは物価の優等生だったのですね。他の物価が上がっている(所得も上がっている)ので、LPの価値は実質的に低下してきたことになり、中学・高校生などには真理さんの頃には買いにくかったけれど聖子さんの頃には買いやすくなったのです。
そこで物価(貨幣価値)を同じにした時に売上枚数はどうなるか、次のように計算してみます。
 ①1970年の物価水準を100として各年の物価水準を指数で表します 
 ②各年の売上枚数をその年の指数①で割って100倍します
つまり、物価水準が1970年の2倍(指数200)になっていたとして、LPの値段がほとんど変わらず2000円なら実質的には半額になっているのです。そうするとその年10万枚売れたアルバムは1970年だったら5万枚しか売れなかったと計算できます。(あくまで計算上です)
 計算式は 10万枚÷200×100=5万枚 となります。
次の表の「補正後」というのはこれです。

          オリコン1位獲得アルバム
オリコン
   (上の表で「曲」となっているのは「アルバム」の間違いです)

こうしてみると、ピンクレディーはベスト版以外はアルバムの売り上げは多くなかったのですね。聖子さんは活躍期間が長いのでたくさんあがっていますが、最高の「SUPREME」も補正してみると真理さんのファーストアルバムと同じくらいの売れ方になりますし、他のアルバムも真理さんのアルバムと同程度と考えてよさそうです。
つまり真理さんとピンクレディー、聖子さんの差は生の数字よりずっと小さい、むしろ同じくらいだということが言えそうです。

さらに、この表は物価指数だけで考えましたが、そのほかの要素もあります。たとえば所得が増えるとエンゲル係数が下がりますから教養・娯楽費が増えてレコードやCDを買うことも増えるでしょう。また、真理さんの頃には再生装置自体が高価でどこの家でも持っているという状態ではなく、「ステレオ」は家宝のようでした(下の写真参照)。それがピンクレディーや聖子さんのころになればかなり普及し、レコードやCDをかけられる環境が整ってきました。当然レコードやCDの売り上げが伸びて当然なのです。
こう考えてくると、後の時代よりはるかにLPが売れにくい条件のもとで、真理さんがあれだけの売り上げを示したというのは驚異的なことだったのです。

ステレオ2

さらにもう一度上の表を見てみると、1972年の真理さんが1位の週が合計22週です。つまり1年の半分近くを独占していたということになります。順位というのは相対的なものですから他の曲の状況に左右されます。しかし逆にその時代の中でどういう位置を占めたかということをよく表してくれます。私は直感的に真理さんの当時の人気はシェア50%と思っているのですが、アルバムにおけるこの数字を見るとまさにその通りですね。 やはり「アルバムの女王」と言ってよいでしょう。

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アナログLP

ひこうき雲さん、こんにちは。
祝賀会ではお会いできず残念でした。

私は、天地真理さんの同時代のファンでなかったので知りませんでしたが、LPに関しても、「若葉のささやき」までは、突出して売れていたのですね。
72年というと私は中2でした。親は裕福ではありませんでしたが、兄と私(いずれも当時、洋楽ロックファン)のために、私が小6ぐらいのとき、無理をして親戚の電気屋さんでステレオを買ってくれました。それはもう、嬉しくてたまりませんでした。小遣いやお年玉でLPを買い、何度も何度も聴きました。辞書で英単語を調べながら歌詞カードを見たり、A面がどうだ、B面がどうだとか評論しあったりしてました。(そういえば、その後、ライブハウスでも、出演者は、休憩を挟んで、前半をA面、後半をB面って言ってました。どの人でもそう言っていたかは分かりませんが。)今と違い、あの頃は、そもそも情報量が少なく、Music Magazineなんかを読んで、その論評を参考に、買うのを選んでました。聴ける音楽の量が限られていましたので、1曲1曲を、しつこく何度も聴いてました。

ちょっと脱線してしまいましたが、ですから、当時、天地真理さんのLPを心待ちにして買われていた方の気持ちが、よーく分かります。レコード店から家に帰るときのなんとも言えない嬉しい気持ちとか、ジャケットの匂いとか・・・きっと、何度も何度も大切に聴いておられたのでしょうね。(大変遅ればせながら、私も、中古ショップ、ヤフオク等で、オリジナルアルバムはすべて買いました。大切に聴かせていただいています♪)

Re: アナログLP

pokerin3545さん
コメントありがとうございます。

pokerinさんはあの頃中学生だったのですね。私は大学だったのでLPを買うのは困らなかったのですが(そのかわり食費を節約したり服を買い控えたりしましたが)、高校生の頃は買える機会は限られていたので、何を買うか良く考えましたね。
pokerinさんのコメントを読み、あの頃のわくわく感を思い出しました。
レコードというものも、CDどはちがい、やはりわくわく感がありましたね。
ジャケットから盤面に手を触れないようにそっと出し、クリーナーで拭いて、ターンテーブルに載せる。回り出したレコードを傷つけないように針をそっと落とす。そういう一連の動作が何か儀式のようで、その間に音楽を聴く集中力が自然と高まってきましたね。
そんなことさえ懐かしいですね。

また教えられました

うれしいことではありますが、いつも教えられるばっかりです。
アルバムが売れたという事実はとても重いし、溜飲が下がる思いです。
わかる人はわかっていたのですね。
でもシングルの小柳、アルバムの天地、というのは意外でした。
同時期の比較という意味で、この事実も大きいですが、
どういうファン心理の差なのでしょう。
真理さんのアルバムはいいということを、うわさなどで知り得たのでしょうか。
純粋に、テレビ、ラジオ、シングルなどで真理さんのヒット曲を聴いて、アルバムまで買おうと思った、ということなのでしょうか。
シングルは数枚持っていたにもかかわらずアルバムは1枚も持っていなかった私としては、何とも悔しいです。

それとここまでアルバムに人気があったにもかかわらず、
そのアルバムまで買っていたファンたちはどうして、
アルバム「恋する夏の日」以降で半減、オン・ステージ以降でさらに半減、となってしまったのでしょう。
単純にアルバムの質から考えると納得がいかない所です。
他の選択肢が出てきてしまったということだけなのでしょうか。
それとも、アルバムを買っていた主体が大学生や独身男性であって、
それらが就職、あるいは結婚と進んだためなのでしょうか。
すみません。
あまりにうれしい事実で、さらなる疑問が次々と湧いてしまいまして。
いちいちお応えいただくには及びません。

おっしゃるように再生装置自体が普及途上だったというハンディも大きいですね。
カーオーディオでカセットが普及したのは1980年代らしいですから、
ドライブで、ダビングしたアルバムを聴くということも
1970年代は出来にくかったはずですし。
私が大学時代('70末~'80初)に学生同士で旅行に行くと、
松田聖子さんのレコードからダビングしたカセットを
レンタカーの中で延々と聴かされた覚えがあります。

経済にはうといので。

ひこうき雲様

 経済にはうといのでこのたびのご分析のお手際はうらやましき限りです。映画などについても、史上初の興行成績達成、などと頻繁に耳にしますが、やはり大衆の購買力や時代背景を考慮に入れ均等な俎上において比較し論じなければ実態が見えてまいりません。

 映画で思い出しましたが、ひこうき雲さんは「愛ってなんだろ」観覧申込みはされましたか? もしもこのたびは観られないのであっても、この機会にニュープリントを援助・実現しておけば、(全国の名画座等での)上映促進等に当然つながります。

 当方、幸いなことに東京開催の40周年記念行事にすべて参加できそうです。経済にうといため、ふところの帳尻がいささか合わなくなってはきておりますが。

Re: また教えられました

真さん
コメントありがとうございます。

真さんの疑問は私も持っています。つまり誰がアルバムを買っていたかということですね。
皆さんの書かれたものを読むと当時中学生であった人もお小遣いを節約してアルバムを買ったということがあったようです。しかし、当時のLPの値段、お小遣いの額を考えると、そういう層だけでこれだけのアルバムが売れたとはあまり考えられないのです。そうすると、おそらく大学生や同じ年代の勤労青年が主体ではないかと思います。大学生なら当時、音楽への関心もあってLPを買うことも普通になってきていましたから。
そうするとそれは、2つ目の疑問にもつながるのではないでしょうか。つまりその層はどうして買わなくなったか、ということです。真さんが推測されているように、就職、結婚という人生の階段を上るうちに離れていった、とすると一応合理的な説明になると思います。実は私自身がこのパターンに近いので、納得はいくのです。しかしそれを証明するデータは今のところありません。また「恋する夏の日」以後の急減はこれで説明できるか、若干の疑問も残ります。

実はこの話題は本編の「時代と天地真理」を書くために集めている資料の一部をとりあえず紹介したものです。まだデータ不足で、もう少し資料を集めるつもりですので、その中にヒントが出てくることを期待したいと思います。

Re: 経済にはうといので。

shiolaboさん
コメントありがとうございます。

真さんへの返信にも書きましたが、まだまだデータが少なく、<時代>を描くには足りません。
今回はそのうちの一部を使ってみたものです。
こんなことを試しながら、だんだん構想をつくっていこうと思っています。

「愛ってなんだろ」も前回と同じく予定がまだはっきりしません。
それでも成立が危ぶまれるようなら買っておこうと思っていましたが、どうやら成立は確実のようですね。
私はどうなるかわかりませんが、どうぞお楽しみください。

Re:Re: また教えられました

私の場合,きっかけは放送で聴いてで多分間違いないです.
(当時はNHK FMのひるの歌謡曲でアルバム1枚ほぼそのまま放送するのが普通でした.)
で,こんな素晴らしいのは買うしかないということで(私の場合は)全部購入しました.
でもレコードをかけることはほとんどせず,最初に録音したものや放送分を編集して繰り返し聞いていましたね.
ですから買わないと思えば,ほとんど買わなくても済んだわけです.
きっかけになったアルバムが何かはよく覚えていないのですが,セカンドアルバムあたりじゃないかと思います.
なお放送日は発売日とはかなりずれていたと思います.

Re: Re:Re: また教えられました

mariminafan さん
貴重な情報を入れていただきありがとうございます。

なるほどFMですね。たしかに「ひるの歌謡曲」はアルバムをそっくりかけていました。
実際に買われたご本人からの情報ですから、これほど確実なものはありませんね。

こういう方法があるということを考えていませんでしたが、有効ですね。ほかの方にもそういう情報があれば教えていただきたいものです。

それにしてもmariminafanさんはその頃から録音だけでなく編集までやっておられたのですね。
それであの膨大なコレクションができたわけですね。
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