カセットテープから聴こえてきたものは
家の中を整理していたら、中身を書いてないカセットテープが出てきました。何だろうかとかけてみるとモーツァルトのオペラ「フィガロの結婚」でした。何も書いてないので演奏者もわかりません。ただオーケストラがウィーン・フィルであることはすぐわかりました。あの艶やかでほんのりと切なさを持った優雅な音色は、真理さんの声と同じように唯一無二ですから。しかし指揮者を始めその他の演奏者はわからなかったのですが、そのためかえって先入観を持たずに、”知識”ではなく純粋に感性で聴くことができました。
最近は耳だけでオペラを聴くということがあまりなかったのですが、久しぶりにじっくりと堪能できました。演奏は素晴らしく、もう少し”モーツァルトの遊び”があればという気はしましたが、心がゆったりと解放され至福の3時間でした。最後になってアナウンスが流れ、ようやく演奏者がわかりました。1980年のウィーン国立歌劇場の東京公演で、フィガロはヘルマン・プライ、伯爵夫人がグンドゥラ・ヤノヴィッツ、スザンナがルチア・ポップ、ケルビーノがアグネス・ヴァルツァ、指揮はカール・ベームという当時の最高のメンバーでした。
このテープを聴きながら私はさまざまなことを考えましたが、ある場面である映画を思い浮かべました。それは「ショーシャンクの空に」という映画です。ご覧になった方も多いと思いますが、詳しくはネットで調べてください。妻殺しの冤罪で終身刑となりショーシャンク刑務所に服役していた元銀行員のアンディが、困難にも希望を捨てず知恵と意志の力で20年かけてついに脱獄を果たすというストーリーです。その中で、所長に重用され図書館を任されたアンディが「フィガロ」のレコードを見つけ第3幕の「手紙の二重唱」をかけ、それをスピーカーで刑務所中に流してしまう場面があります。Youtubeにありましたのでご覧ください。
(この二重唱をしっかり聴きたい方はこちらでどうぞ)
この映画の中でもとりわけ印象的な場面なので映画をご覧になった方は覚えておられると思います。私もこの映画を見た時、突然この曲が聴こえてきて驚きました。動画の中の署長や刑務官の様子からもわかるように、この刑務所では囚人たちは人を人と思わぬような扱いを受けていました。そんな殺伐とした場面が続いた後で、突如、天から降るようにこの曲が聴こえてきたのです。囚人たちの深い感動にとらわれた表情が印象的ですね。囚人たちのほとんどはオペラもモーツァルトも聴いたことはなかったでしょう。歌っている言葉はイタリア語ですから、何を歌っているか意味も分からなかったでしょう。でもこの音楽の美しさは囚人たちの心にオアシスの水のように浸みこんで、ささくれだった心をうるおし癒してくれたのだと思います。
この二重唱は伯爵夫人の言葉をスザンナが筆記して手紙を書くという場面ですが、実は二人はストーリー上ではこの手紙に対しそれぞれ複雑な心理をもっているのです。ところがモーツアルトはそれを超越してこれ以上ないくらいに美しい音楽を書いたのです。そこにモーツァルトの天才があり、<理屈>とは違う音楽独自の世界があると私は思うのですが、私が天地真理さんのうたを愛するのはやはりそういう音楽独自の世界を見せてくれるからなのです。真理さん自身「歌は美です」と言っていますが、それについては以前の記事をご覧ください。
そういえば、荒くれ者がしんみりと聴き入る場面がこの映画にもありました。
(映画「虹をわたって」より)
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最近は耳だけでオペラを聴くということがあまりなかったのですが、久しぶりにじっくりと堪能できました。演奏は素晴らしく、もう少し”モーツァルトの遊び”があればという気はしましたが、心がゆったりと解放され至福の3時間でした。最後になってアナウンスが流れ、ようやく演奏者がわかりました。1980年のウィーン国立歌劇場の東京公演で、フィガロはヘルマン・プライ、伯爵夫人がグンドゥラ・ヤノヴィッツ、スザンナがルチア・ポップ、ケルビーノがアグネス・ヴァルツァ、指揮はカール・ベームという当時の最高のメンバーでした。
このテープを聴きながら私はさまざまなことを考えましたが、ある場面である映画を思い浮かべました。それは「ショーシャンクの空に」という映画です。ご覧になった方も多いと思いますが、詳しくはネットで調べてください。妻殺しの冤罪で終身刑となりショーシャンク刑務所に服役していた元銀行員のアンディが、困難にも希望を捨てず知恵と意志の力で20年かけてついに脱獄を果たすというストーリーです。その中で、所長に重用され図書館を任されたアンディが「フィガロ」のレコードを見つけ第3幕の「手紙の二重唱」をかけ、それをスピーカーで刑務所中に流してしまう場面があります。Youtubeにありましたのでご覧ください。
(この二重唱をしっかり聴きたい方はこちらでどうぞ)
この映画の中でもとりわけ印象的な場面なので映画をご覧になった方は覚えておられると思います。私もこの映画を見た時、突然この曲が聴こえてきて驚きました。動画の中の署長や刑務官の様子からもわかるように、この刑務所では囚人たちは人を人と思わぬような扱いを受けていました。そんな殺伐とした場面が続いた後で、突如、天から降るようにこの曲が聴こえてきたのです。囚人たちの深い感動にとらわれた表情が印象的ですね。囚人たちのほとんどはオペラもモーツァルトも聴いたことはなかったでしょう。歌っている言葉はイタリア語ですから、何を歌っているか意味も分からなかったでしょう。でもこの音楽の美しさは囚人たちの心にオアシスの水のように浸みこんで、ささくれだった心をうるおし癒してくれたのだと思います。
この二重唱は伯爵夫人の言葉をスザンナが筆記して手紙を書くという場面ですが、実は二人はストーリー上ではこの手紙に対しそれぞれ複雑な心理をもっているのです。ところがモーツアルトはそれを超越してこれ以上ないくらいに美しい音楽を書いたのです。そこにモーツァルトの天才があり、<理屈>とは違う音楽独自の世界があると私は思うのですが、私が天地真理さんのうたを愛するのはやはりそういう音楽独自の世界を見せてくれるからなのです。真理さん自身「歌は美です」と言っていますが、それについては以前の記事をご覧ください。
そういえば、荒くれ者がしんみりと聴き入る場面がこの映画にもありました。
(映画「虹をわたって」より)
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