どこにも音楽史

ウィーンで一番思い出に残っているのはホテルの近くの公園です。最初にそこを通ったのはウィーンに着いた日の午後、シェーンブルン宮殿を見ておこうと出かけた時でした。一番近い地下鉄の駅へ地図を見ながら歩いたのですが、ホテルから大きな噴水のあるシュワルツェンベルク広場を横切って少し小さめな道を進むと建物の下をくぐるようなところへ出ました。「この道でいいのかな?」とちょっと不安になりましたが、そこを抜けると大きな池のある公園のようなところに出ました。草地や池の縁では学生風の若者たちが大勢座って話し込んでいました。左手には大きなドームのある教会らしい建物がありました。「何だろう?」と思いましたが急いでいたのでそこを通り過ぎて進むと駅らしき建物が見えてきました。ほっと安心してその建物に近寄ってみると「あっ!これか!」とびっくりしました。
カールスプラッツ駅修正

何と写真では何度も見ている建築家オットー・ワグナーの代表作「カールスプラッツ駅舎」だったのです。ウィーンにおけるアール・ヌーヴォー(ユーゲントシュティール)建築の代表作です。地下鉄へはその横の階段を下りていくので実際は駅舎として使われていませんでしたが(ウィーンでもプラハでも地下鉄やトラムは乗るときも降りる時も改札口はありませんし駅員もいません)、建物は当時のままでした。その少し向こうにはもう一つ対になる建物があって、そちらはカフェとして使われていました。ウィーンではこんな風に、たまたま来たところが歴史があって有名なところだったということがしばしばありました。
途中で見た大きな教会はあとで調べるとカールス教会といってバロック建築の傑作と言われているものでした。そしてその横に並んだ大きな建物群はウィーン工科大学だということもわかりました。学生が大勢いたわけです。ウィーンにいる間、どこかへ出かけたりホテルに帰るときにいつもこの公園を通りましたが、緑豊かな環境、若者たちの真摯に語り合う姿など大好きな場所になりました。特に黄昏時、ベンチに座ってくつろぐと私自身の学生時代に戻ったようななつかしい時間が過ぎていきました。こんなところで学べるなんて彼らは本当に幸せだなあ、とうらやましくなりました。帰国してから調べたら実はオットー・ワグナーもこの工科大学の卒業生だったのです。
カールス教会と広場縮小

ウィーンではどの街角も何かこういう謂れがあるみたいです。特に音楽関係はそうですね。実は毎日通っていたカールスプラッツの公園に抜ける少し小さめの通り、これもあとで地図を調べると「ブルックナー通り」でした。ブルックナーがウィーン時代に住んでいた家は別のところのようですからどうして「ブルックナー通り」なのかわかりませんが、名前がついているからには何か理由があるのでしょう。そんな風にいたるところに音楽家たちの痕跡があるのです。
短い滞在でしたからそういうところをいろいろ見て回るということはできませんでしたが、私がぜひ訪ねたいと思ったのは国立歌劇場と楽友協会でした。音楽家の痕跡と言っても今そこで音楽が生まれる場ではありません。しかし演奏会場というのは現在そこで音楽が生まれる場ですからそこへ行けばそういう時間を共有できると思ったからです。もちろん本当はそこで実際にオペラを見たり演奏を聴きたかったのですが、短い滞在日数では日程的に無理がありあきらめていたので、せめて外からだけでもと思ったのです。
国立歌劇場修正

国立歌劇場の前に立った時には胸がときめきました。開場前でしたので正面入り口のガラスを覗いてみると中は格調ある空間でした。やはり無理しても観ればよかったかなとも思いましたが、その日はバレー公演の日でどちらにしてもオペラは観れなかったのです。
この辺りはウィーンの中心部で市民や観光客であふれていましたし、有名な店がたくさんあるところです。ケーキで有名な「ザッハー」などは長い行列でしたので、「カフェ・モーツァルト」に入りました。ウィンナコーヒーというとちょっとくどいような印象をもっていたのですが、本場のウィンナコーヒーはあっさりして非常においしいものでした。
カフェモーツァルト修正

いろいろ歩いて暗くなってきた頃、帰りに国立歌劇場の横を通ると、なんとそこに大スクリーンが設置されていて、上演中のバレーが映し出されていました。これならチケットがなくても観られます。実際、その前で椅子に座って熱心に観る人たちが大勢いました。もちろん音はホール内とは全然違いますが、歴史あるこの歌劇場も現代化を図っているのですね。
国立歌劇場スクリーンバレー修正

楽友協会(ムジークフェライン)はそこから歩いてすぐのところにありました。
ムジークフェライン3修正

ここはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の本拠地で、大ホールは音響が素晴らしく、ウィーン・フィルの艶やかな音が最もよく活きると言われています。外観もとても美しい建物で、それを見ていてもウィーン・フィルの絹のような音色が聴こえてくるようでした。

そこからホテルに帰ろうと、前の大きな道路(環状線)を横切ると、いつもの公園でした。公園の中の道を歩いていくと大きな彫像があったので。何だろうと近づいてみるとブラームスの像でした。「犬も歩けば・・・」ではありませんが、ちょっと歩けばこういうものに出会うのです。
ブラームス像2修正

後で調べてみると、楽友協会の建物が建てられた最初の頃、ブラームスは大ホールで盛んに指揮を行ったり、小ホールでピアノ演奏をしたそうで、その功績をたたえ小ホールは「ブラームス・ザール」(ザールはホールの意味)と呼ばれているのだそうです。そこでその向かいの公園に像があっても不思議はないのですね。

ともかくウィーンはいたるところに音楽の歴史、あるいは音楽活動に関係したものがあるのです。まさに「音楽の都」ですね。
そこで最後に余談を一つ。こんなものもありました。
オペラトイレ2修正

「オペラ・トイレ」というものです。国立歌劇場の横から地下鉄の駅に通じる地下街へ降りる階段があります。その階段を降りると目の前からヨハン・シュトラウスの「こうもり」序曲が聴こえてきたので何だろうと見てみるとこのトイレがありました。ヨーロッパでは公衆トイレは有料であることが多く、小銭を用意しておく必要がありますが、このトイレはその中で一番高く、たしか0.75ユーロだったと思います。約80円くらいでしょうか。とは言え、特別な仕掛けはないようです。

さて「こうもり」が出てきたところで、真理さんの歌うワルツを聴いてみましょう。真理さんが歌うワルツは、リズムが踊るように弾み、ポルタメントをきかせたり、実に粋で優雅で陶酔的です。




FM軽井沢 天地真理特集 のお知らせ

最近のコメントで太田忠さんからお知らせいただきましたが、FM軽井沢の『軽井沢発!太田忠の経済・金融“縦横無尽”』で天地真理特集の続編が放送されます。
放送日は次の通りです。
   6月18日(土)午後4時~5時 天地真理特集⑤
   6月25日(土)午後4時~5時 天地真理特集⑥
詳しくは「さくら貝」掲示板をご覧ください。待ち遠しいですね。



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No title

 素晴らしい旅行をされましたね。羨ましい限りです。音楽的素養のない私ですがウィーンフィルのニューイヤーコンサートだけは
知っていまして、ホールで聴いてみたいと夢見ています。 カルロス・クライバーなどの演奏は好きですね。 真理さん、たまにはクラッシックも聴かれるんでしょうかね。

Re: No title

Kourei-Seinenさん
コメントありがとうございます。

今回は「ウィーンへ行った」という程度でした。やはりもっと余裕あるスケジュールでないと本当に知ったことにはなりませんね。
ニューイヤーコンサートはもちろんウィーン・フィルのコンサートはチケットの入手が非常に難しいようです。早くから手配すればいいのでしょうが、私の場合、どたばたと行くことになったので余裕がありませんでした。

真理さんはジャズがお好きのようですがバッハやショパンも弾きこなした人ですから聴かれることはあるでしょうね。そういえば、真理さんが歌に惹かれた一つの機会としてウィーン少年合唱団の歌を聴いた(コンサートか映画で?)ことがあるようですが、実は私がウィーンからの帰りに乗った飛行機にウィーン少年合唱団のメンバーが乗っていました。同じエコノミークラスで、私の座席の少し前でした。乗り込んだときは例の制服のセーラー姿でしたが、その内それぞれくつろいだ姿になっていたのに、降りるときにはまた制服を着ていました。機内では結構楽しそうにしていましたが、人の前に出るときにはきちんとするのですね。いま、日本の各地で公演しているはずです。

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このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: 初恋談義

ウィーン少年合唱団のことを書いたら、こんなブログを教えていただきました。
ウィーン少年合唱団にもこんな熱心なファンたちがいたのですね。
  http://ponko3.at.webry.info/201501/article_2.html
  http://ponko3.at.webry.info/201501/article_1.html
  http://ponko3.at.webry.info/201306/article_1.html

オールスター初恋談義

 エーリッヒ・シャーリング氏は当時合唱団のソロをとってたんですね。その彼が’73年再来日した時に真理さんは対面してますね。 シャーリング氏にほっぺにキスされた真理さんは真赤になってしまったとの逸話を思い出しました。 人生初のキスだったのかな?
  真理さんは感激の余り抱きついたのですが、ただ相手は司会の芳村真理さんだったようです。

Re: オールスター初恋談義

Kourei-Seinen さん
コメントありがとうございます。

私もその番組は見ていたのですが、細かい記憶はありません。
ただ、一緒にシューベルトの「野ばら」を歌ったのはよく覚えています。
紹介したブログにはエーリッヒ・シャーリング氏のその後にも触れたコメントもありますが、必ずしも希望通りではなかったかもしれないけれど、それなりに幸せな人生を送られてきたようです。40年という歳月には人それぞれの人生がありますね。

初恋談義

初めまして💛
我がブログのアクセスレポートからひこうき雲様のブログに覗わせていただきました。
初恋談義の記事を載せてくださってありがとうございます。
初めてあのページを見つけた時はどうやってコメントを入れてよいのかわからずに、ただ嬉しく読むだけでしたが、此処には書き入れる場所が有ったので早速おしゃべりに来ました。

私も45年前にあの番組の音だけは聞いていたのですよ。
野ばらの歌声が聞こえて来た時は、まさかあのシャーリング君だとは思いませんでした。

ひこうき雲様も今年の春にウィーンにいらしたのですね。
私も一週間前にウィーンから戻って来ました。
丁度アイスハイリゲンと言う冷え込みの日々に行ってしまったのですが、お天気はよかったです。

偶然とは思いますが、私もカールス教会をぶらついてブラームスの像を見つけ、カールスプラッツの駅舎の周りを通りました。
時間があったらもっとゆっくり散歩したい場所ですね。

v-22今日はこんな共通した思い出の場所の記事にぶつかって嬉しい日でした。

Re: 初恋談義

ponko310さん
初めまして。コメントありがとうございます。

ponkoさんのブログを勝手に紹介させていただきましたが、まさかご本人がご訪問くださるとは思いませんでした。とてもうれしいです。
ponkoさんのブログは私のブログの読者の方から教えていただいたのですが、とても興味深くてごく一部ですがいろいろ読ませていただきました。ウィーン少年合唱団は意外とファンの方と気軽に接触できたのにも驚きましたし、それから現在までコンタクトがつなっがているということにも驚きました。その頃の気質とは大部変わっているのでしょうが、帰りの飛行機で乗り合わせた彼らの少年らしい姿を思い浮かべました。

ponkoさんが行かれた頃ウィーンは寒かったのですね。私はその前のプラハがともかく寒かったのでウィーンは暖かいなと思いました。そんな暖かい風に吹かれて、あのカールスプラッツの公園のベンチでくつろいだ時間が今回の旅行の何よりの思い出になりましたが、ponkoさんもそこに行かれたということで偶然に驚いています。

これからもponkoさんのブログを覗かせていただきます。私のブログもよろしかったらまたご覧になってみてください。

No title

ひこうき雲さん

私のコメントへのお返事が快くて、調子に乗って又来ました、てへへ。
ブログを書いているよりもこうやっておしゃべりの方が楽しくって~。
周りに日本人がいないので、こんな答えがあるとつい嬉しくなり、まとわりついてしまいます。
抑制しますから今回は大目に見てくださいね。

私の阿保ブログに来ていらしてくださったのですね。
なんて嬉しいんでしょう。
私もこれからひこうき雲さんの記事をのぞかせていただきますね。

天地真理さんは人物も声も以前から好きでした。
あの笑顔は人の心を和ませてくれますね。
ウィーン少年合唱団の少年が初恋の人だと知ってますます好感を覚えたんですよ。

シャーリングさんは家のレストランを継がないで、保険の外交員になったそうですが、今はもう年金所得者の年齢ですね。

歳は過ぎても好きな人を思う心は大切に養い続けましょうよ。
人を好きになる気持ちはこの世で一番貴重だと思いますから。


Re: No title

ponko310さん
コメントありがとうございます。大歓迎ですよ。

ponkoさんは語学の才能がおありでうらやましいです。私もウィーンに住んで毎日オペラを見に行きたいなどと思うのですが語学が苦手で観光地はともかく日常生活は残念ながら無理だと思います。

ponkoさんが天地真理さんに好感を持っておられると知ってとてもうれしいです。
天地真理さんは幼少のころからピアノを習いショパンも弾きこなすくらいでしたし、国立音大付属中高で学んで音楽的素養の基本はクラシックでしたからウィーン少年合唱団の歌を聞いたり映画を見たりする機会はいろいろあったのでしょうね。(私も小学校?の頃、映画を見た覚えがあります。内容は覚えていませんが題名はたしか「野ばら」だったような気がします)
「初恋談義」の頃、誰も達したことのない絶大な人気を得た真理さんですが、その後の人生は波乱万丈で、心の病に苦しんだりもされました。今、再結成されたファンクラブにも支えらえてようやく穏やかな日々を送っておられます。人の長い人生にはよろこびも悲しみも苦しみも、さまざまにあるものですね。

これからもお気軽にお立ち寄りください。ありがとうございました。
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