『アルテス』8月号

今回は「さくら貝」掲示板で教えていただいた『アルテス』という雑誌の記事について触れたいと思います。
私はこれまで『アルテス』という雑誌を読んだことはなかったのですが、表紙に「ジャンル無用の音楽言論誌」と謳っているとおりクラシックありジャズあり民謡ありといった感じでさまざまなジャンルのテーマが盛り込まれ、「言論誌」というようにエンターテイメントではなく、ちょっと変わった専門誌という印象です。
その8月号に「洋楽はアイドルが教えてくれた――70年代アイドルのライブ・アルバムを聴く」というシリーズの第5回ということで天地真理さんが取り上げられています。筆者は鈴木英之という方で「レトロカルチャー研究家」と紹介されています。1954年生まれということですから真理さんとほぼ同世代です。そういうこともあってか、真理さんについての紹介はかなり正確です。
前半は「天地真理」の紹介ですが、「1970年代初期、国民的人気を誇っていたアイドル歌手といえば、天地真理ということに異論を唱える方はいないだろう」「当時老若男女を問わず幅広い世代に絶大な人気を誇るスーパー・アイドルだった」「女性アイドルとしては初めて同性からも憧れられる存在」等きわめて的確に表現されていますし、真理さんの音楽的素養に触れ「そんな彼女のミュージシャンとしての片鱗は・・・<バッハ・インベンション>というピアノ演奏でも覗い知ることができる」といったことまで言及しています。
デビューに至る経歴やその後の実績も細かく紹介され、「この時代はアイドルに対しての評価はまだ低く、歌手の頂点であるレコード大賞にまでは手が届かなかった。ただ彼女がアイドルとしてこれだけの実績を残したことは、のちにピンク・レディーや中森明菜といったアイドルがレコード大賞を受賞する布石になったといえるだろう」と真理さんが切り開いた地平、その残した功績についてもしっかりと書かれています。
さらに『ひとりじゃないの』が東日本大震災の復興支援歌としてカバーされたことについて、「いまでも天地真理のヒット曲が多くの人々に愛され続け、勇気と元気を与えるパワーをもっていることの証明といえるだろう」と書かれています。
私は、音楽専門誌で「天地真理」をこれだけまともに評価した文章に出会えたことにとても感激し、後半のライブアルバムの紹介に期待が膨らみました。
ところが、後半を読んでみると、ちょっと残念でした。曲目等“事実”の紹介が大部分で、真理さんの<うた>についてはほとんど書かれていないのです。「洋楽はアイドルが教えてくれた」というタイトルは、アイドルがライブで歌ったカバーを聴いて洋楽に目を開かれた」という意味らしく、洋楽カバーについては若干詳しく書かれているのですが、フォーク調とかカントリー風といったアレンジの特徴がほとんどです。他のカバー曲についても、詳しく書かれてはいますが、「曲」そのものについての解説だけで、真理さんがそれをどう歌っているかといったことにはほとんど触れていません。これではライブアルバムをここで取り上げた意義がなくなってしまうのではないでしょうか。評論家という人たちはどうして<うた>そのものについて書こうとしないのでしょう?
前半がよかっただけにちょっとがっかりでしたが、ライブアルバムの内容を広く知ってもらっただけでも良かったとしておきましょう。
 


※リクエスト情報

FMしばたhttp://www.agatt769.co.jp/index.htmlから。

NHKFM「ミュージックプラザ」(月曜)9月29日は「名前の昭和歌謡」、10月6日は「秋のリクエストスペシャル」です。他の日や特集に関係のないリクエストも可能です。

リクエストを出す時、「天地真理特集をお願いします」という要望を書き添えましょう。

FM軽井沢「天地真理ミュージックコレクション」へは天地真理オフィシャルウェブサイトの「FM放送」へ。


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ライブアルバム評?

この記事については、私もひこうき雲さんと同様の感想を持ちました。
前半の「天地真理評」が充実しているだけに、本論であるはずの後半の「ライブアルバム評」にはいささか物足りなさが残ります。「天地真理」を単なるアイドルではなく、フォーク・シンガー/ミュージシャンとして正当に評価していることは確かなのですが。

連載の他の回を読んでいないので何ともいえませんが、この記事の主眼は「レトロカルチャー」として70年代アイドルのうんちくを語ることと、そのアイドルたちがカバーした「洋楽(を中心とした)曲」そのものを紹介することにあるのかもしれませんね。
『アルテス』は電子雑誌なので書店には並んでいないようですが、購買層や発行部数が気になるところです。

Re: ライブアルバム評?

bellwood さん
コメントありがとうございます。

「洋楽はアイドルが教えてくれた」というタイトルが謎ですね。私は最初よくわからず、記事を書きながら本文にあるような意味かなと思ったのですが、bellwood さんのような解釈もできますね。この連載の第1回を読めばわかるのでしょうが、実際はどうなのでしょう。それがわかると文の構成もわかってくると思うのですが。
それでも正面から真理さんを論じようとしているのは確かで、こういう評論がもっともっと増えてほしいですね。

No title

アルテスの記事とは、全く関係ないですが・・・・

 「アイドル」とは、音楽芸能産業におけるあるビジネスモデルにそって、活動することであり、このアイドル産業のビジネスモデルを最初に作ったのが、ビートルズと言われています。

 言うまでもないことですが、ビートルズは、エルビスを真似た不良ロックバンドから、大衆受けするイメージどおりに大人しい髪形、服装にし、バラエティTV番組、映画など、多様なメディアに露出し、それが成功し地位を固めると、芸術的なシリアスなミュージシャンになっていった。

 このビジネスモデルは、60年代末から70年代の日本において、かなり影響を与えており、「音楽を柱にタレントとして売り出し、テレビメディアへの露出でアイドルスターになり、一定の年齢になれば、本格的な女優、俳優、歌謡歌手、あるいは結婚引退に移行する」という流れを戦略としていたようです。

 このビジネスモデルに沿って活動した場合、アイドルから脱皮、移行して初めて、世間的には、評価されたということになるようです。

 今思うと、天地真理さんは、LPアルバム「明日へのメロディー」の時点で、既に本格的な歌手に移行したと考えられるのですが、当時、多くのファン、一般大衆が、それについてこれなくて、アイドルのままにしてしまったのかもしれません。

Re: No title

chitaさん
コメントありがとうございます。

なるほど
>アイドルから脱皮、移行して初めて、世間的には、評価されたということになる
ということなのですね。
確かに「世間」というのはなんでも「物語り」にしたがりますし、それを増幅しているのがマスコミですね。
そうすると、それを逆手に取ったのが「卒業」というイベントですね。キャンディーズや山口百恵の「引退」もそのハシリと言えますね。区切りをつけてしまうと「アイドル」はそのままのイメージで冷凍保存されて「伝説」になれますから。

ライヴ盤・イン・ジャパン

またしても突然ですが、思い出したのでコメントさせていただきます。
ライブアルバム評としては、WEBマガジン『週刊てりとりぃ』に掲載された下記のコラムの方がより充実していますね。(こちらも「さくら貝」掲示板で教えていただいた記事です)

連載コラム【ライブ盤・イン・ジャパン】その11
実はフォークの歌姫だった~天地真理
http://weeklyterritory.blogspot.jp/2014/05/2014523.html

筆者の馬飼野元宏さんは、以前ご紹介した『日本のフォーク完全読本』の中で、天地真理さんを「アイドル・ポップスとフォークを繋ぐシンガー」と評していた方です。この連載コラムは他の回も面白く、真理さんとの関連では下記をご参考まで。

連載コラム【ライヴ盤・イン・ジャパン】その13
フォーク歌謡の歌姫は声美人~あべ静江
http://weeklyterritory.blogspot.jp/2014/11/2014117.html

Re: ライヴ盤・イン・ジャパン

bellwoodさん
いい資料をご紹介いただきありがとうございます。

この文章は本当にいいですね。歌や歌手にまつわるエピソードではなく、<うた>そのものをしっかり論じています。あべ静江さんについての文章もそうですが、<頭>ではなく、自分の<耳>で聴いた<うた>を語ることができる人ですね。「馬飼野」さんというと真理さんとも縁のある作曲家の馬飼野兄弟がいますが、何か関係があるのでしょうか?
いずれにしても個人のブログのようなものではなく、"雑誌"に類するメディアで真理さんについて書かれたものとしては最良のものでしょう。納得して読むことができました。
そして、こういう文章がこうした場に少しずつ登場し始めていることに希望を感じます。私たちがそれぞれのしかたでコツコツと続けてきたことが無駄ではなかった、そんな気持ちです。ようやく出始めた芽を大きく育てるために、もっともっと頑張りたいですね。
とりあえず、この文章を多くの人たちに読んでもらえるように広く紹介するのもよいのではないでしょうか。

Re: Re: ライヴ盤・イン・ジャパン

馬飼野元宏さんへのインタビュー記事がありますのでご参考まで。馬飼野兄弟との関係は・・・どうなんでしょうね?
http://kayo.musicshelf.jp/special/vol018/

私も『アルテス』や『週刊てりとりぃ』の記事などを読んで、ある「兆し」のようなものを感じています。「昭和歌謡ブーム」の波が来ている今がチャンスのように思いますから、私たちにできることを続けたいですね。

Re: Re: Re: ライヴ盤・イン・ジャパン

bellwoodさん
コメントありがとうございます。

このインタビュー記事も興味深いところがありますね。

最近話題になった『レコードコレクターズ』や『アルテス』、そして『週刊てりとりぃ』などを見ると、"専門家"の中では<歌手 天地真理>に対する評価は(程度の差はあれ)すでに確立してきていると思えます。また初めて真理さんのうたを聴いた若い人も率直に評価している人が多いです。
あとは依然として先入観で見ている人たちですね。そういう人たちに広くアピールするにはどうしたらいいか、知恵を絞りたいですね。
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