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春の風が吹いていたら

聴き比べシリーズ、今回は『春の風が吹いていたら』です。この曲は吉田拓郎と最初の妻(四角)佳子が歌っていたことから、吉田拓郎の作詞・作曲と思われていた時期もありましたが、伊庭啓子作詞・作曲です。伊庭啓子は『ある雨の日の情景』の作詞者でもあります。

それではまず“本家”吉田拓郎・(四角)佳子のデュエットからお聴きください。

とても牧歌的でほのぼのとした歌い方ですね。吉田拓郎も非常に素直なうたで、当時の典型的なフォークという感じですね。

次におそらくフジテレビの「ミュージックフェア」(1974.11.12)での南沙織さんと吉田拓郎のデュエットです。

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(この動画は以前Youtubeで公開されていましたが現在は消えています。このブログ限定で使わせていただきましたが、もし不都合がありましたらご連絡ください)
南沙織さんは佳子さんのイメージが強いようですね。でもはつらつと歌っていてこの人のうたの好さがでています。少しスマートな感じがするのはフォーク的というよりポップス的なのでしょうか。吉田拓郎もずいぶんやさしげに歌っています。

次に最近の四角佳子さんです。

しっとりとして心にしみるうたですね。やはり年齢を経てこのような歌い方になってきたのでしょう。歌詞でいえば「夕焼雲の色」ですね。これを聴いてから最初のうたを聴いてみると、その頃にもそういうニュアンスがありますね。
なお、ここで共演している常富喜雄さんは元フォークグループ「猫」のメンバーで、大学生の頃は真理さんが高校時代所属していた早稲田大学フォークソングクラブの主要なメンバーでした。練習の後、帰る方向が同じということでよく真理さんと一緒に帰ったということです。

最後に天地真理さんです。

『私は天地真理』コンサートで歌われたものですが、他の人と全く違いますね。こういうところが天地真理さんのうたを聴く最高の楽しみなのです。
ともかくこの弾み方はどうでしょう。「(ひとりで)空を」の一句ですぐに聴く者の心をとらえてしまいます。弾むといってもただリズミカルとか元気がいいというのではなく、生きているよろこびが実感として込み上げてくるような感覚です。そして私はそれこそ天地真理だけが表現できたものだと思っているのです。
この曲については本編『空いっぱいの幸せ』で詳しく触れていますのでご覧いただければと思いますが、多彩な表情を見せながら「生きている」という感覚がまさに生き生きと歌われています。この曲の中にあった2つの要素の内、「夕焼雲」の要素を強調したのが四角佳子さんのうたとすれば、天地真理さんのうたは「明るい朝の光」に満たされているといえるでしょうか。


※リクエスト情報

FMしばたhttp://www.agatt769.co.jp/index.htmlから。

NHKFM「ミュージックプラザ」(月曜)7月21日は「海の昭和歌謡」、28日は「昭和のヒットメーカー 弾厚作」(つまり作曲家としての加山雄三)、8月4日は「真夏のリクエストスペシャル」です。他の日や特集に関係のないリクエストも可能です。

リクエストを出す時、「天地真理特集をお願いします」という要望を書き添えましょう。

FM軽井沢「天地真理ミュージックコレクション」へは天地真理オフィシャルウェブサイトの「FM放送」へ。


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リズムも超一流です

ひこうき雲さん ご無沙汰しています。
私も大変気に入っている曲を取り上げていただいたので、一言書かせていただきます。
ここに、そして「空いっぱいの幸せ」にお書きになっていること、まさにその通りと思います。
この曲で私もとりわけ素晴らしいと思い、そして真理さんの際立った特長として強調されるべきことは、リズム感の素晴らしさです。
「リズムに乗ったニュアンス付け」と言った方がいいかもしれません。

よく聴くと、まず4拍子のリズムに実に正確に乗っている。
そしてさらに、その1拍を3等分した3連符が、正確に体の中でビートを打っていて、そこに抑揚を持った言葉が正確にヒットして出て行っています。
その言葉も、短く切ったもの、伸ばしたもの、がことごとく完璧に「乗って」います。
「ひっとーりーでっ」「そっらっをっ」「みってーい^た^ ら^」・・・「(息)はーるーのーの は^ら^の^」・・・
わざわざ書くのもばかばかしいですが、惚れ惚れしますね。
ジャズでのいわゆるバウンスと言えばいいのでしょうか。
これらは単にリズムを正確刻む、といったレベルのさらに上にあるものと思います。
弾み、膨らみ、伸び、そよぐ。
それらが、ご指摘のようにただ「リズミックで元気がいい」というだけのものではありませんね。
この単純な楽曲がなぜここまで心を揺さぶるのか、何度も聴きたくなるのか。
曲と歌詞にもともと含まれていた、素朴だが豊かな情景と情感がなぜここまでふくらみ、気品を持って響くのか。

蛇足ですが私はこのようなリズムの良さを聴くと、彼女が残していたバッハのインベンションのピアノ演奏を思い出します。
あの時のリズムの正確さ、間の取り方の絶妙さが歌にも引き継がれているという印象です。
ただピアノを修業すればこのようなものが身につくといった単純なものではないと思います。
名立たるピアニストにもリズムの巧拙はありますから。
彼女はいつ、どこでこれを身に着けたのか。
オリジナル曲ではリズムの作りがもともと少々違うのですが、
真理さんは、ここでのアレンジのようなリズムの作りがとても好きで、気に入っているともいえるでしょう。

声の質的な良さや、言葉のニュアンスの精妙さとともに、
リズム扱いの良さも超一流であった、というのが私の印象です。

Re: リズムも超一流です

真さん
お久しぶりです。コメントいただきうれしいです。

やはり真さんのコメントを読むと、おぼろげな印象だったものが、細部までくっきりと鮮明に見えてくる気がします。しかも、どうしてこんなに魅力的なのか、設計図を見るようにその秘密がわかってきました。
おっしゃるように真理さんのリズム感覚は素晴らしいですね。「弾み、膨らみ、伸び、そよぐ」という表現に何度もうなずきました。
バッハのインベンション、正確にリズムを取りながら機械的な単調さに陥らず一つ一つの音が生き生きと動いていく、あの特徴がたしかに歌の中にも生きていますね。

ありがとうございました。またお気軽にコメントをお願いします。
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