「恋は水色」

聴き比べシリーズ第3回は「恋は水色」です。
この曲は天地真理さんが「時間ですよ」で初めて2階の窓に腰掛けギターを弾きながら歌った曲、いわば隠れたデビュー曲とも言える曲ですね。元々は1967年のユーロヴィジョンソングコンテストでヴィッキー・レアンドロスが歌って入賞し世に出た曲です。

ではそのヴィッキーで聴いてみましょう。原詞とその翻訳も見られます。


原詞は一般的に聴く漣健児の日本語詞とかなり違った内容ですね。それもあってヴィッキーのうたもメリハリのある情感の強いうたになっていて、日本人が一般的にもっているこの曲のイメージと少し違っています。

日本人が一般的にもっているこの曲のイメージはむしろポール・モーリア グランドオーケストラの演奏によると思います。聴いてみましょう。


流麗で明るく、ちょっと懐かしさもある、そんな演奏でした。

日本語歌詞で(おそらく)最初にシングルを出し、日本でのスタンダードのように思われているのが森山良子さんです。


これはおそらく森山良子さん19歳の時の録音と思われますが、若々しくみずみずしい声ですね。元気にあふれ晴れ渡った青空を思わせるうたです。

次に由紀さおりさんで聴いてみましょう。


ちょっと短めで比較がしずらい面もありますが、森山さんの開放的な歌い方と比べるとかなり抑えた歌い方ですね。穏やかであたたかく、実際にはよく考えられコントロールされ歌われているのですが、淡々と歌われているためにヒーリング音楽のように感じます。リラックスして気持ちがいいのですが。昼寝してしまいそうな気もします。

ちょっとめずらしい音源を見つけました。伊東ゆかりさんです。伊東ゆかりさんは中尾ミエさん、園まりさんとともに「スパーク3人娘」と言われました。いわば2代目3人娘ですね。(天地真理さんたち「新3人娘」は3代目です)この音源はテレビ番組からの録音のようです。伊東さんたちの世代のこういうライブ音源は珍しいですね。


この人らしい大げさでない小づくりな歌い方なので鼻歌みたいな感じもしないではありませんが、ちょっと甘えたような声の魅力もあって、力まずに心楽しませてくれます。「恋は水色、空と海の色」というところの歌い回しはなかなか魅力的です。

さてそれでは天地真理さんの「恋は水色」を聴いてみましょう。これはファーストアルバムですから20歳になったばかりの頃の録音です。森山良子さんの録音時の年齢とほぼ同じですね。


これまで聴いた誰とも違ううたですね。敢えて言えば森山良子さんと由紀さおりさんを併せたような感じでしょうか。森山良子さんほど元気よく弾んではいないが滲み出るような生気があり、穏やかに心を潤すようなところは由紀さおりさんに近いですが、はっきりとした起伏があります。
少し森山良子さんと詳しく比較してみましょう。まず波形を比べてみてください。上が森山良子さん、下が天地真理さんです。
波形比較

スケールの取り方など若干正確でないところもありますが、特徴はよく出ています。森山良子さんは全体を通して見るとそれほど起伏は大きくありません。ところが天地真理さんは大きな波がはっきりしています。細くなったところと大きく膨らむところが明確ですね。森山良子さんは終始あかるく元気に歌っていてあまり変化がなく、その意味では一本調子です。それに対し天地真理さんはメリハリがはっきりしていて変化に富んだ構成になっています。しかも変化は全体の構成だけではく、細部の表情にも表れています。一部聴いてみましょう。[広告] VPS

森山良子さんの場合は「青い空が」というところの「ソ・ラ・ガ」や「白い波が」というところの「ナ・ミ・ガ」を区切って歌っているのが特徴的ですね。こう歌うことで歯切れよく元気な感じが生まれていますが、その他のところはあまり表情をつけていません。
真理さんは、テンポがやや遅いこともありますが、実に表情が豊かです。「青い空が」のところはおおらかに弧を描くように歌い、「お日さまに」はそっとやさしく、まさに溶けるように、「白い波が」は波のように大きくしかしやはりおおらかに弧を描き、「青い海に」はさらにやさしく歌って、夢のような世界を紡いでいきます。
もちろんこういう微妙な表情の変化はここだけでなく全編を通じて見られます。たゆたうような繊細な色調の変化、それは私に印象派の絵画を連想させます。
モネ 睡蓮
こういう敏感さ、それは「青い海」と「水色の空」の違いに典型的に現れています。
そもそも「恋は水色」の原題は「 L'amour est bleu」です。英語では「Love is blue」ですが、ウィキペディアによれば、英語のblueには気が滅入る、不快などの意味があるがフランス語のbleuにはそういう意味はないということです。原詞からするとこのbleuは情熱的なニュアンスがあるようですね。強い青と言う感じでしょうか。実は日本では同じ「青」でもいくつもの種類がありそれぞれ違う名前があるのです。こちらを見ていただくとわかりますが、「青」は
青色
「水色」は
水色
こういう違いを真理さんのようにくっきりと歌い分けている人はいません。ともかく、きまりきったこれ見よがしの表情ではなく、一見何の技巧もないようでいながら、すみずみにまで豊かなニュアンスが通い、水に反射する光のように、刻々と表情をかえながら聴く者を夢幻的な世界にいざなっていく、それが天地真理さんの「恋は水色」なのです。

なお、本編HP「空いっぱいの幸せ」の各曲寸評もご覧ください。

※リクエスト情報

FMしばたhttp://www.agatt769.co.jp/index.htmlから。

NHKFM「ミュージックプラザ」(月曜)12月9日は「祝 ザ・タイガース再結成」、16日は「年末リクエストスペシャル」です。他の日や特集に関係のないリクエストも可能です。
リクエストを出す時、「天地真理特集をお願いします」という要望を書き添えましょう。

FM軽井沢「天地真理ミュージックコレクション」へは天地真理オフィシャルウェブサイトの「FM放送」へ。


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