君よ知るや南の国(1)

聴き比べシリーズ、今回は少し変わった趣向になります。
曲は「君よ知るや南の国」です。この曲は天地真理さん主演の同名ミュージカルのテーマ曲です。このミュージカルは1975年5月31日から6月24日まで約1か月にわたって日劇で上演された真理さんにとって初めての、そして唯一となった本格的ミュージカルです。
私がオークションで入手した台本によれば、スタッフは<脚本・田波靖男/演出・中村哮夫/作曲・宮川泰/作詞・安井かずみ/振付・縣 洋二>などとなっています。キャストは<ミニヨン・天地真理/ウィルヘルム・峰岸徹/ロタリオ・小山田宗徳/フィリーナ・加茂さくら/ジャルモ・友竹正則>などとなっていて、ミュージカル初挑戦の真理さんを実力も実績もある方々がしっかり支えるという充実した布陣でした。
制作は<渡辺晋・橘一郎>となっていますが、このような体制をつくり実質的にこのミュージカルをプロデュースしたのは橘一郎さんでした。その辺の事情については橘さんご自身のブログをご覧ください。(なお、その中で作詞は片桐和子さんとなっていますが、お尋ねしたところ、勘違いということでした)

このミュージカルのタイトルは《ゲーテ原作・トーマ作曲「ミニヨン」より 君よ知るや南の国》となっています。つまりゲーテの「ウィルヘルム・マイスターの修業時代」を原作とするフランスの作曲家トマ(トーマ)のオペラ「ミニヨン」を元にしているということですね。しかし、ストーリーについては大まかな筋を踏襲しながらもよりわかりやすい工夫がされているようですし、特に音楽については、テーマ曲「君よ知るや南の国」だけは「作曲:トーマ、編曲:宮川泰」となっていますが、アルバムに収録されている他の曲はすべて宮川泰作曲となっていて、ほぼオリジナルと言っていいと思います。ですからこのミュージカルは古典の風格を継承しながらそこに新しい命を吹き込んだ作品と言えるでしょう。

そこで今回はこの「君よ知るや南の国」を古典としてのトマの原曲と、真理さんが歌った宮川泰編曲版とで聴き比べてみたいと思います。
いつもと順序が逆ですが、最初に天地真理さんの歌で宮川版「君よ知るや南の国」をお聴きください。



このうたはシングル版(「初めての涙」B面)ですが、夢見るような憧れが次第に幸福感に包まれて最後はよろこびがあふれるように高まって終わります。最後の繰り返しは声楽の素養がはっきりと現れて輝かしい歌になっていますね。
ではオペラの方ではどんなふうに歌われていたのでしょう。ミニヨンを歌っているのはリュシール・ヴィニョンという人です。



曲については、前半はほぼ同じメロディーですが後半は全く違っています。印象もまるで違いますね。どういう場面で歌われているのでしょうか?あらすじを見るとわかるように、幼い頃さらわれて孤独な日々を送っていたミニヨンがわずかに記憶に残っている故郷への切ない憧れを歌う場面なのです。ですからこのように悲哀を感じさせる歌い方になっているのです。
この曲はフランス語で歌われていますので、もう少し言葉と音楽の関係がわかるように日本語字幕付きの動画を見てみましょう。歌っているのは林美智子さんで、オペラでの舞台ではなくコンサートのライブです。



これも少し印象が違います。実際のオペラの舞台でストーリーにしたがって演技する場合と、明るいライトの下で美しいドレスを着て歌うコンサートの違いもありますし、何よりそれぞれの解釈(楽譜から何を読み取り、どう表現するか)の違いがあります。それから声質の違いももちろんあります。リュシール・ヴィニョンも林美智子さんもメゾソプラノです。元々ミニヨンはオペラのヒロインとしては珍しくメゾソプラノの役なのです。ですからソプラノのような華やかさは元々無いのですが、林さんの方が少し明るい感じですね。真理さんも本来の声域はメゾソプラノですが声質はさらに明るいですね。
それはともかく、Youtubeを見るとこの曲は多くの人によって歌われていて、それぞれに少しずつ違う印象がありますからご覧になってみてください。その中で(全部聴いたわけではありませんが)私が一番気に入ったのは往年の名ソプラノ、エリザベート・グリュンマーです。(1953年録音 ドイツ語版)



この人はメゾではなくソプラノですから声が明るく輝きがあります。そして何よりメロディックに歌っています。この曲の後半は詞の意味やストーリーの上での意味を意識して”語り”っぽく歌う人が多いですが、グリュンマーはメロディーを大切に流麗に歌っています。実はそれは天地真理さんのうたの特徴でもあるのです。芝居っぽくうまく歌うよりも、音楽の自然な流れにのって美しく歌う、それが真理さんのうたの魅力だと私は思っています。そういう私の感覚とぴたりと合う名唱です。

もうひとつ、日本語の詞で歌っている動画はないかとYoutubeで探してみると1つだけありました。何と日本人として初めて欧米で認められた伝説的なソプラノ歌手三浦環(たまき)です。(1936年録音のSPレコード)



古い録音なので鮮明ではないですが言葉は聴きとれますね。この詞はたくさんの歌の訳詞で知られる堀内敬三で「君よ知るや南の国」というこの人の訳がこの曲のタイトルとして定着することになったのです。

今回はトマの原曲と真理さんが歌う宮川泰編曲版を聴き比べてきましたがいかがだったでしょうか。原曲を聴いたことがなかったという方も結構多いのではないかと思いますが、やはりとても魅力的な曲ですね。そして同時に、より親しみやすく、口ずさみやすくした宮川版の良さもお分かりいただけたのではないでしょうか。
さて次回は同じ真理さんの異なるバージョンで聴き比べてみたいと思います。


リクエスト情報
NHKFM「歌謡スクランブル」
     (月~土 13:00~14:00) 
 リクエスト特集(3月予定) リクエストは番組ホームページから。
      締め切りは2月12日(日)です。


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ママの目

【最後に追加あります】

久しぶりにラジオでかかった天地真理さんの曲の紹介です。
まず次の動画をご覧ください。逗子・葉山のコミュニティーFM「湘南ビーチFM」で去る1月14日(土)午前6時から放送された「Saturday Morning POEM」という番組です。特に始まって50秒のあたりから耳を傾けて聴いてください。



そうです、天地真理さん作曲の「子守歌 母の愛」が使われていましたね。途中までということと、曲の紹介が番組中ではなかったことがちょっと残念ですが、ホームページでは画面にあったような紹介がされています。ただ「天地真理作曲」とは書いてないので「?」という人もいるでしょうね。
実はこれは第2回の放送で、第1回は7日にありました。私はファンクラブからこの番組の紹介があったのにその日はうっかり聴き忘れてしまったのです。ですからもしかしたらその時、曲についての紹介もあったのかもしれません。もし聴かれた方があれば情報をいただければありがたいです。
それはともかく、「子守歌 母の愛」はBGMとしてとてもよかったですね。ちょうど「ママの目」という詩だったのでその導入としてぴったりでした。私もこの曲はこういう使い方があるのではないかと思っていたので、実現してうれしいです。これを機にもっといろいろの場面でこの曲が紹介されるといいですね。

次にそのほかの放送された真理さんの曲の情報です。
このごろはいちいち紹介していませんが、ラジオでは真理さんの歌は結構放送されています。私は主にNHKFMをチェックしていて、
「歌謡スクランブル」「ラジオ深夜便」といった番組は欠かさずチェックしています。もちろんラジオ局はたくさんありますから私が知っているのはごく一部にすぎません。関西についてはちっちゃい私さんがよく紹介してくださっていますし、「さくら貝」掲示板ではbellwoodさんがニッポン放送の「GO!GO!ドーナツ盤ハンター」という番組を紹介しておられます。また、前回の記事に熱烈ファンさんがコメントを下さり、その中でNHK第1放送の「歌の日曜散歩」という番組を紹介していただきました。毎週日曜日、午前10時05分~ 午前11時50分の放送でリクエストができます。ホームページはこちらです。私も今度放送を聴いてリクエストを出してみようと思います。
その中で私の守備範囲でごく最近放送されたものを紹介しますと、
まず、12月14日(水) 歌謡スクランブルの特集「冬色のアルバム(3)」で「木枯らしの鋪道」がかかりました。それから1月12日(木)にやはり歌謡スクランブルの特集「ポップス花暦(1)」で「若葉のささやき」がかかりました。歌謡スクランブルでは毎年「冬色のアルバム」のような特集がありますが、「木枯らしの鋪道」は近年は常連になっています。「木枯らしの鋪道」は真理さんの曲で初めてオリコンベスト10に入れず大ヒットとは言えなかった曲ですが、今は人気のある曲になって冬の曲の定番になってきました。一方「若葉のささやき」は春から初夏の定番曲としてすっかり定着していますが、この時期に聴くのは珍しいですね。
約1か月で2曲というのは早いペースですが歌謡スクランブルでは割とよく真理さんの曲がかかっています。歌謡スクランブルは普段はリクエストがありませんが、ときどきリクエスト特集があります。実は今、3月のリクエスト特集のためのリクエストを募集しています。詳しくは番組ホームページをご覧になってぜひリクエストしましょう。締め切りは2月12日(日)です。

【追加】
湘南ビーチFM「Saturday Morning POEM」1月21日(土)の放送です。今回は詩の朗読のBGMに「子守歌 母の愛」が使われ詩の内容ともぴったりと合っています。



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ある発見

     新年おめでとうございます

今年はとても穏やかな正月でした。三が日、多少雪がちらついたこともありましたがおおむね晴れて透明度の高い冬の青空が広がって周囲の山々もくっきりと見えました。
私はできるだけ散歩を心がけているのですが、冬の間は道に雪が積もっていたりしてあまり歩けません。しかし今年の正月は道に雪がなく、すいすいと歩くことができました。おかげで例年の冬に比べ身体も軽く体調はとてもいいです。本格的な雪かきをしないで済んでいることも大きいですが。

さて、そんな散歩を楽しんでいる最中にうれしいことがありました。私は散歩の時はデジタルプレイヤーを持っていて音楽を聴きながら歩くことが多いです。散歩コースには林や畑、あるいは沢沿いの道などもありますから自然の音に耳を傾けることも多いですが、きれいな景色を見ながら真理さんの歌を聴くのは楽しみの一つです。日々の散歩を飽きずに続けられる一つの理由でもあります。
ただ、歩くときは常に歌に集中しているわけではありません。普段はBGM的に聴き流しているだけです。でも突然ぐっとうたに引き込まれることがあります。「ひこうき雲」を聴いていたとき、「ひとはいつも ムームー ひとり」というところで一歩も歩けなくなってしまったこともありました。
先日も歩きながらアルバム「私は天地真理」の「水色の恋」を聴いていた時、突然引き込まれてしまいました。この「私は天地真理」版「水色の恋」についてはホームページ「空いっぱいの幸せ」の寸評にも書きましたが、私にはとても不思議なうたでした。最初はぎこちなく始まるのですが、歌い終わったときにはすっかり魅了されているのです。どうしてそうなるのか、不思議でなりませんでした。
ところがこの散歩の最中、それまでBGMのように私の意識の背景で聴こえていたうたが突然くっきりと前景に現れてきたのです。それはバンドが入ってきた2番の「あの人にさよならを言わなかったの」のあと「さよならはお別れの言葉だから」の「さよなら」を歌い出した時です。パッと明るくなったように声が変わり、深々とした声で歌い出します。そして「お別れの言葉だから」から「あなたの姿、あなたの声は」とのびのびと歌って聴く者の心を解放していくのです。
なるほどこの変化が「私は天地真理」版「水色の恋」の独特の魅力を生んでいるのだと、この時合点したのです。意識を集中して聴いていた時になかなかわからなかったことが、散歩しながらBGM的に聴いていた時にわかったわけですが、こういうことはよくあります。何かちょっとした機会に発見がある、それも真理さんのうたの楽しみなのです。私は真理さんのうたをおそらく何百回も聴いていると思いますがまだまだ未知の世界があるのですね。
今年も、そういう<天地真理を聴く楽しみ>を少しでも多くの人に届けられるよう拙いながらもこのブログを続けていこうと思います。最近では”ネタ”がなかなか思い浮かばず苦労していますが、皆さんからヒントや情報をいただければうれしいです。
 今年もよろしくお願いいたします。





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