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3人娘の童話作家(3)

本題の<3人娘がそろって「童話作家」を歌ったのはなぜか>を考えてみたいと思います。

真理さんが「童話作家」を初めて歌ったのは1976年4月17日の「私は天地真理」コンサートでした。その後、確認できるだけで、8月の梅田コマ劇場および日劇での天地真理ショー、9月から12月にかけて全国9か所での天地真理リサイタル「そよ風に誘われて」で歌われました。つまりコンサートのたびにまるで自分の持ち歌のように歌っていたのです。またレコードでは「童話作家」を含むアルバム「私は天地真理」が6月1日発売され,12月21日にはその題名を冠したアルバム「童話作家」が発売されています。
一方作者のさだまさしさんはグレープの解散コンサートで「童話作家」を初めて歌った後、一時歌手活動から離れていて、再開するのが11月で最初のソロアルバムに「童話作家」が収録されたのです。ということは、この間「童話作家」をコンサートやレコードで持ち歌のように歌っていたのは本家のさださんではなく真理さんだったのです。そのことを真理さんが自覚していたかはわかりませんが、真理さんが「童話作家」に特別の想いをもっていたことは間違いないでしょう。

それでは沙織さんやルミ子さんはどうして「童話作家」を歌ったのでしょう。
前回紹介した南沙織さんが「童話作家」を歌う動画はいつのものかmariminafanさんが調べてくださって、1977年3月30日のようです。またこの年はそれ以後のコンサートでも何回か歌われているようです。
小柳ルミ子さんの動画は同じ1977年の梅田コマ劇場公演ですから8月と思われます。

以前、3人娘がそろって(もちろん一緒という意味ではなく別々に)録音した「あなた」を紹介したことがありましたが、「あなた」のような大ヒット曲なら3人がそろってカバーするのはわかります。しかし、「童話作家」はグレープ解散コンサートで初演され、76年11月25日発売のソロアルバム「帰去来」に初めて収録されました。もちろんシングル発売はされていませんし、一般の人の間でよく知られた曲ではなかったでしょう。私はさださんの曲に詳しくはありませんが、NHKFMの番組「今日は一日“さだまさし”三昧」ではこの曲をリクエストした人をかなりのマニアだというような言い方をしていたように記憶しています。つまりさださんについて詳しい人でないと知らない曲ということでしょう。そういうレアな曲を天地真理さんに続いて南沙織さん、小柳ルミ子さんがそろってコンサートで取り上げ歌ったというのはとても不思議なことです。単なる偶然とは思えないのです。

ここからは私の想像、というより妄想になってきます。
この曲を76年いっぱい真理さんが歌い続け、翌年3月に沙織さんが歌い始める間に3人にとって大きな出来事がありました。真理さんの入院です。76年の年末頃から真理さんの「奇行」が話題になり、年が明けて1月23日(15日という報道もある)に突然入院してしまったのです。渡辺プロはこれを「甲状腺機能障害」のためと発表していましたが、最近になって真理さん自身によりうつ病であったことが公表されています。つまりさまざまなストレスこそがその要因であったわけです。入院そのものは約1か月で退院となりましたが、その後も復帰できず消息も不明となってしまいました。
この真理さんの入院は他の「アイドル」たちに大きな衝撃を与えたのではないでしょうか。もちろん彼らが直接そのことについて発言したのを私は知りませんし、おそらく実際にも公の場でそういう発言はなかったと思います。しかし彼らは「甲状腺機能障害」という公式発表にもかかわらず、真の原因を直感していたのではないでしょうか。私は以前の記事でこの年7月のキャンディーズの「普通の女の子」宣言もその影響ではないかと書きましたが、沙織さんやルミ子さんには真相ははっきりわかっていたはずです。
2010年10月に真理さんとルミ子さんの再会を描いた「解禁」というテレビ番組がありました。その再会を収録した日のルミ子さんのブログに「天地真理ちゃんへ」と題した記事がありました。そのなかでルミ子さんはこう書いていました。

  時代に翻弄され続け 
  私達にしか分からない心の痛みも 
  私達だから分かる喜びも 
  全てが貴重な思い出です
  真理ちゃんと私は“戦友”ですね

この思いは沙織さんも同じだったでしょう。真理さんの入院の報を聴いたとき、2人とも「真理ちゃんは私だ」と感じたのではないでしょうか。だから、入院までの最後の数か月、真理さんが自分の思いを託すように心を込めて歌っていた「童話作家」を自分のコンサートで取り上げ歌ったのではないでしょうか。戦いに倒れた真理さんに“戦友”として深い共感と励ましを込めて。


※最近パソコンが不調です。コメントへの対応が遅れることがあったらそのためとご承知ください。


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3人娘の童話作家(2)

前回、コメントへの返信でなぜ3人そろって「童話作家」を歌ったのだろうと書いたのですが、そのことを考えているうちにいろいろな想像が湧いてきました。そこで今回はそういう想像について書いてみます。
私は真理さんについて「事実」に関してはできる限り検証して書いています。噂や想像を「事実」として書かないように努めています。検証できないことについてはそのことがわかるように書いています。もちろん判断に誤りがある場合もあると思いますが、私自身のルールとしてはそうしています。
しかし今回は思い切った想像を書いてみたいと思います。「想像」というより「願望」も混じっているかもしれません。「こうだったらいいのに」という想像です。ともかく検証されてはいないがそうではないかという私の想像が相当入っていますからそのつもりでお読みください。

さて、前回紹介したさだまさしさんの「童話作家」は1976年4月5日長崎でのグレープ解散コンサートのライブ録画ですが、東京での解散コンサートは3月26日に共立講堂で行われたようです。真理さんが、久世光彦さんに誘われて聴きに行き、楽屋も訪ねたと言っているのはこのコンサートだと思います。このコンサートでは「童話作家」のほか「哀しきマリオネット」「告悔」も歌われ、「私は天地真理」コンサートで歌われたさだ作品が全部入っています。したがってこの解散コンサートは「私は天地真理」コンサートに深い影響を与えていると思われます。
久世さんは真理さんのコンサートの構成を依頼されて、「天地真理の現在」をテーマにしようと思ったのではないでしょうか。「私は天地真理」という普通でないタイトルも久世さんの命名だと私は思っています。久世さんは、1年前の単身パリ旅行以来「ありのままの自分を出したい」「自分に正直に生きたい」という意思をはっきり示すようになった真理さんが、一方で人気が低下しそれに伴って不本意な仕事もせざるを得ないという状況の中で苦しんでいる姿も承知していたと思います。だからこのコンサートを真理さんが自分の思いのたけを表現できる場にしようと考えたのではないでしょうか。そこで久世さんがすでに聴いていたグレープのアルバムから「告悔」や「哀しきマリオネット」などをその候補として考えていたと思われます。真理さんも久世さんからこれらの曲を紹介され、その時「今度解散コンサートがあるから一緒に聴きに行かないか」と誘われたのでしょう。(※) ただ「童話作家」はこの解散コンサートが初演でしたからそこで初めて聴いたはずで、真理さん自身が「この曲をぜひ歌いたい」と決めたのか久世さんが選んだのかはわかりませんがおそらく二人の想いが一致したのではないでしょうか。もしかすると「告悔」や「哀しきマリオネット」もこの時初めて聴いた可能性もありますが、「私は天地真理」コンサートが4月17日ですからこの時初めて聴いたとすれば期間的に短すぎると思うのでこの2曲はすでに聴いていたと思います。いずれにしても、この解散コンサートを聴いて、真理さんもさだ作品3曲に深く共感して「私は天地真理」コンサートの柱にしようと久世さんとともに最終的に決めたのだろうと私は考えています。
 ※ この2曲を選んだのは真理さんという可能性もあります。ただ、
    解散コンサートに誘ったのが久世さんですから、「グレープの
    曲はどうか」と提案したのは久世さんでしょう。
実際さだ作品3曲は「私は天地真理」コンサートで特別な位置を占めています。「童話作家」はオープニングの「水色の恋」に続いて実質的な第1曲として歌われ、コンサートの基調をつくる役割を果たしていますし、他の2曲は最後の「オー・マリアーナ」の直前、コンサートの大詰めの位置で歌われ、真理さんが特別の思いを込めていたことは一目瞭然です。それらは歌手というより一人の人間として、真理さんの心からのメッセージとなっています。
真理さんはこのコンサートの後、前回紹介したように8月の梅田コマ劇場でのショーや9月中野サンプラザを皮切りとする全国縦断リサイタル「そよ風に誘われて」などでも「童話作家」を歌っています。つまり真理さんは1976年1年間を通じてこの曲に自分の想いを託して歌い続けたのです。

すでにだいぶ長くなってしまいました。まだ肝心のテーマに届いていませんが、次回、ページをあらためて触れることにします。




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