”空前”の証明

さくら貝掲示板で1970年~75年当時の雑誌「平凡」の編集者だった塩澤幸登さんのブログが紹介されていました。見てみて驚きました。「忘れられない人」というシリーズが続いていてすでに相当な量になっているのですが、当時の芸能界のまったく知らなかったさまざまなエピソードがたくさん語られているのです。しかもよくあるような出所不明の伝聞ではなく、ご自身の直接体験したことがほとんどです。そしてその第1回が天地真理さんなのです。
それによれば塩澤さんは真理さんにマスコミで最初にインタビューした人のようで、それ以来「平凡」での天地真理担当として真理さんからも信頼される関係であったようです。もちろん人と人との関係は一方の感じ方がそのまま他方の感じ方と一緒とは限りませんが、塩澤さんは真理さんの全盛期を近いところで愛着をもって見守ってきてくれた人のように感じます。
真理さんについては第1回だけでなく他の人がテーマの回でもしばしば触れておられますし、真理さんに直接関係ない話題でも当時の芸能界の内幕が現れていて、このブログでも取り上げたいテーマがたくさんありそうなのですが、今回は客観的な数字にまつわる話題にしようと思います。

それは1973年9月の「平凡」における人気投票です。塩澤さんによるとそれはこういう結果だったということです。
平凡人気投票7309
1973年9月といえば「恋する夏の日」で真理さんが頂点を極めた頃ですが、それはこの数字にはっきり表れています。占有率とはこの10名の得票の中でどれだけの割合を占めるかという数字ですが、真理さんはほぼ40%となっています。つまりベストテンメンバーの得票のうち4割をひとりで占めていたということです。
平凡人気投票7309占有率

空前と言われた真理さんの人気は同時代を生きていた人たちには自明のことですが、知らない人たちに説明するのはなかなか難しくて、いろいろの角度からのアプローチがあるのですが、この「平凡」の数字は最もわかりやすく説得力がありますね。以前の記事でさまざまな「証言」でそれを試みたことがありましたが、その中に「我が高校のクラスでは、8割の男子生徒、5割の女子生徒が天地真理ファン」という証言がありました。それを読んで「ちょっと大げさじゃない?」と思った人もおられたかもしれませんが、22万票の中で4割ということは、「クラス」という小さな空間の中ではこの程度のことは当然ありえたと納得されるのではないでしょうか。ネットでも「天地真理は一人で他のすべてのアイドルと拮抗していた」という趣旨の書き込みを見たことがありますし、私もどこかで「天地真理の全盛期の人気はシェア50%」と書いた覚えがあります。これはいわば“体感”のようなものを根拠にしているのですが、この「平凡」の数字はそれを具体的な数字で裏付けてくれました。

しかしこれが翌年の人気投票では激変するのですがそれについては次回にします。
ともかく塩澤さんのブログは大変興味深いのでご覧になってみてください。


<放送予定>
NHKFM「歌謡スクランブル」リクエスト特集(2)で天地真理さんの「若葉のささやき」がかかります。
   3月17日(金) 13:00~ (第一曲です)


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スクリーンコンサート

<下に追加情報あります>
<もうひとつ追加情報あります>


2月26日のスクリーンコンサートに行ってきました。
「私は天地真理」のスクリーンコンサートは最初のお披露目の時に見ましたが、第2弾の「天地真理オン・ステージ」はなかなか見に行くことができませんでした。私のところからだと新幹線に乗っていかなければなりませんから、年金生活者にはかなりきびしいのです。時間的にも1日がかりになってしまうので「行くぞ!」と言う気持ちにならないとなかなか行けなかったのです。しかし現在の上演予定では4月までということですから、ぐずぐずしていると行きそびれてしまいます。そこで何とか予定をやりくりして行ってきました。そして、思い切って行ってきて本当によかったと今思っています。
会場は原宿のCAPSULEというホールですが、私はもともと原宿にはまったく土地勘がなく、会場周辺はおそらく昔からの小路がそのまま残っているのでしょうが、曲がった道が入り組んでいて見つけるのにかなり苦労しました。事前にパソコンで地図を印刷して持っていたのですが、道幅などの感覚がよくわからず、結局使い慣れないスマホのマップでやっとたどり着きました。着いてみると少し前に通り過ぎた建物で、よく見ると入口の上の壁に「CAPSULE」と書いてあったのですが下ばかり見ていて気付かず、時間が早めだったので入口の看板も出ていなくてわからなかったのです。東京を離れて40年以上経ち、全く“おのぼりさん”になってしまいました。
原宿カプセル

みなさんは私ほどドジではないと思いますが、初めての方は事前に詳しく調べたりスマホを利用できるようにするなど準備をしておくことをお勧めします。
入り口を入ると真保さんや荘さんなどスタッフの方が迎えてくださいました。毎回本当にご苦労なことで感謝いたします。
ホールの中は35人定員ということでこじんまりしていていましたが、私はアットホームな感じの広さで気に入りました。この日は結構多くの方が来られていましたが少し余裕が残るくらいの入りで、80分ほどの上演も楽な環境で見ることができました。

さて、スクリーンコンサートそのものですが、真理さんのうた自体はCDと同じですから聴き慣れているのですが、音響はやはり違いました。普段はイヤホンで聴くことが多いのですが、大音量でのびのび広がる響きは細部もはっきり聴こえますし、音が豊かで心も解放されていくようでした。
そしてもちろん映像が新鮮でした。このコンサートは録音用に設定されたライブコンサートで椅子に座って固定マイクで歌ったということは知っていましたし、一部は写真で見ることができましたが、実際どんな様子だったのか初めて具体的に見ることができました。
まず真理さんの服装はレコードのジャケット写真でもわかっていましたが、いつものステージ衣装ではなく普段着のような恰好でした。ただ今回わかったのはズボンはGパンのようなものではなくパンタロンのような裾の広がったものだったこと、靴は白い大きな(当時はやっていた)厚底靴だったことです。一見普段着のようだけれど、やはりちゃんとおしゃれをしていたのですね。
しかしそれでも普通のステージ衣装に比べるとずっと地味です。ちょっとおしゃれなフォーク歌手と言った感じですが、いつも<うた>をそっちのけにして「可愛さ」だけを褒められてきた真理さんが、敢えてヴィジュアルな魅力を封印して、余計なことに気を取られず<うた>だけに集中しようという強い意気込みを私は感じました。
それはともかく、広い角度で撮られた写真を見ると、ステージと客席がとても近かったということもわかりました。高低差も小さいですし、真理さんの座っている椅子の位置はステージの端からせいぜい1~2mくらいのように見えました。ですから前列の人は真理さんが本当に間近に見られたのではないでしょうか。録音にはときどき真理さんが客席に語り掛けているところがありますが、お互い目と目を合わせて語り掛けていたのかもしれません。実際そういうことをうかがわせる写真もありました。
それにしても客席を見ると見渡す限り若い男性ですね。みんなさわやかな若者(実は私も当時は彼らと同年代の若者でした)ですが、あれだけの人数になると、取り囲まれるように女性ひとりでステージに立つというのはどんな気持ちなのでしょう。真理さんも地響きのような歓声について聞かれて「ちょっと怖い」と答えていたこともありましたね。でもさすがに慣れているのか全く動ぜず落ち着き払って歌っていました。
でも観客は男性だけではなく若い女性や子供連れの家族も結構いたことが開場前に並ぶ人たちの写真からわかりました。こういう写真も初めて見ましたが、当日の華やいだ雰囲気も伝わってきました。
しかし何といっても素晴らしいのは真理さんの表情ですね。マイクの前で椅子に座りっぱなしでも、さまざまな表情を見せて歌う真理さんは生き生きとしてまさに輝いています。中には(おそらくファンに向かって)破顔一笑といったくだけた表情もあって、静止画とは言え素晴しい音響に包まれて、まるでそのコンサートの会場にいるような気持ちになりました。それは言葉ではやはり説明しきれないもので、ぜひ実際にご覧になることをお勧めします。実際に見なければわからない驚くような映像もありますから。
それから当日はおまけの映像もありました。これも初めて見るものも含め素晴らしかったです。詳しいことは紹介しませんが、次回も同様のものが見られるようですからぜひ行って見て下さい。
6.jpg

このスクリーンコンサート、私は充分に楽しみましたが、それだけにもっともっと幅広い人たちに見てほしいなあと改めて思いました。できれば音楽評論家とか良質なマスコミ関係者など発信力のある人たちに見てもらえれば、世間の<天地真理>の印象は一変するのではないでしょうか。

<追加>
真保さんがお母さん(真理さん)と一緒に谷康一さんの演奏を聴きに行ったとツィートされています。
約40年前の谷さんとの共演は真理さんの最後の全国ツァー「そよ風に誘われて」でした。その様子はこちらでお聴きください。

<追追加>
NHKFM「歌謡スクランブル」リクエスト特集(2)で天地真理さんの「若葉のささやき」がかかります。
   3月17日(金) 13:00~ (第一曲です)


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君よ知るや南の国(3)

(1)ではオペラとの比較、(2)ではシングルとアルバムの比較をしてきました。今回はこのミュージカルのライブ版を取り上げてみたいと思います。カテゴリーも「聴き比べ」ではなく「秘蔵ライブ」シリーズになります。
「え!ライブ版ってあるの?」と思われる方もあると思います。たしかに、アルバム「君よ知るや南の国」はライブと間違われやすいですがスタジオ録音ですし、ライブ録音は公式には発売されていません。渡辺プロやソニーに残っているのではないかという期待もありますが、渡辺プロの場合は2006年のプレミアムボックス発売の際「クラス会」が発見されていますから、このミュージカルも録音・録画があればその時発見されていたはずではないでしょうか。ソニーはライブ録音があれば、わざわざスタジオ録音でアルバムを作る必要もないでしょうから、やはり持っていないのだと思います。
ではライブ録音はないのか、ということですが、日劇のステージそのものではないけれど、そこでのうたをうかがうことができる録音はあるのです。公演中に放送されたフジテレビ「ラブラブショー」での真理さんのうたです。
私がYoutubeに投稿した動画をご覧ください。どういう場面かわかるように台本を読めるようにしてあります。小さければ全画面にして見て下さい。「初めての涙」(~3:25)「明日へのワルツ」(~6:20)「君よ知るや南の国」が歌われています。



ほれぼれするような素晴しさです。テレビの番組ですから、タイプとしてはシングル版に近く、アルバム版ほどドラマティックではなくバランスの取れた美しいうたですが、歌い込んでミニヨンの心情もより深くとらえられています。シングルと比べると声も表現もより繊細で豊かになり、自然でみずみずしい情感があふれるようです。公式、非公式を問わず真理さんの歌の録音の中で最も完成度の高いものの一つと言えます。
私はこれは舞台で歌い込んできたおかげだとこれまで思っていました。しかし今回時系列を整理してみたら、この放送は6月1日、つまり公演が始まった翌日でした。そこでこのラブラブショーにも出演されたプロデューサーの橘さんにお尋ねしたところ、やはり公演に先立って録画されたようです。ということはそれまでの稽古で初日前にここまで仕上げたということです。観てもらうからには最初から完成したものを見せるという、当たり前かもしれませんがプロとしての仕事の厳しさを、この記事を書きながら垣間見た思いがしました。

なお、この「ラブラブショー」の番組そのものもYoutubeで聴くことができます。出演は真理さんと峰岸さんのほか、ゲストに小山田宗徳、,友竹正則、宮川泰、安井かずみ、中村哮夫(演出)、橘市郎(制作)などの皆さん、それに特別ゲストとしてミュージカルに出演した犬のジャックとその飼い主である 岡崎友紀さん、さらに 森光子さんの声のメッセージもあります。打ち解けた楽しい会話からこのミュージカルの制作現場の雰囲気も伝わって来るようです。



もうひとつ、この制作現場の雰囲気を感じさせる録音があります。公演の約2か月前1975年4月7日に放送されたTBS「モーニングジャンボ奥様8時半です」です。この日は「天地真理さんの3つの秘密」という特集で、その3つ目としてミュージカル「君よ知るや南の国」が紹介されています。ゲストは小山田宗徳さんと加茂さくらさんです。



このミュージカルへの真理さんの意気込みと、初めての経験への不安、それを暖かく見守ってくれているベテランのお二人のやさしさが伝わってきますね。

さてこのようにこのミュージカルに関係した録音はいくつかあるのですが、ミュージカルの舞台そのものの映像・録音は写真以外には存在しないと私はあきらめていました。ところがあったのです!
何と8mmカメラで撮影された映像がデジタル化されて公開されたのです。
中島志津男さんがfacebookで「君よ知るや南の国」と「大人への憧れ」を公開されています。
 「君よ知るや南の国」はこちら
 「大人への憧れ」はこちら

このような映像が見られるとはまさに奇跡と思えます。私は実際に見たとはいえ、それほど近い席ではありませんでしたから、こういう真理さんの表情まではあまりよく見ることができませんでした。ですからこれは初めて見る映像です。これによってある意味で真理さんの活動の中の空白が埋められ、いわば“ミッシング・リング”がつながったと言えます。公開してくださった中島さんには深く感謝したいと思います。
なお、中島さんはこれ以外にも真理さんの貴重な映像を公開されていますからこちらをぜひご覧になってください。

3回にわたってミュージカル「君よ知るや南の国」をテーマ曲を中心に様々な録音、録画で見てきました。そのことを通じて、私自身、このミュージカルの魅力をあらためて知ることができました。また、その中で天地真理さんが普段テレビなどではなかなか発揮できなかった多彩な表現力を存分に発揮し、一段と成長したこともわかると思います。


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君よ知るや南の国(2)

前回は天地真理さんが歌ったミュージカル「君よ知るや南の国」の同名テーマ曲とその下敷きとなったトマ作曲のオペラ「ミニヨン」の同名曲とを聴き比べました。
その際天地真理さんのうたはシングル版(「初めての涙」B面)を使ったのですが、真理さんの「君よ知るや南の国」にはほかに2つのバージョンがあります。それはアルバム「君よ知るや南の国」に収録されているものです。
このアルバムはこのミュージカルの中で真理さんが歌った曲をストーリーの展開に沿ってナレーションとセリフ、劇中音楽でつないで構成されています。つまり、日劇のステージのライブ録音ではなくスタジオで録音されたダイジェスト盤です。しかし時々ライブ録音と勘違いされている人がいるのは、実際のステージを彷彿とさせるような臨場感があるからです。このアルバムでの真理さんの歌唱は他のアルバムやシングルでは見られない特徴があります。そのことを私はホームページ「空いっぱいの幸せ」の中の「各曲寸評」で次のように書きました。
 このアルバムの彼女の「うた」は本当にすばらしい。ドラマの展開に
 ともなって歌われるだけに、表情も大きく劇的に歌っていて、普段の
 彼女のうたでは聴けない多彩な技巧が見られる。声もかなり地声を
 使っている場面もあり、さまざまな工夫が見られて彼女の才能を証明
 するアルバムとなっている

では具体的にどう違っているでしょうか。まずもう一度シングル版を聴いていただき、次にアルバムでオーヴァチュア(序曲)に続いて収録されている最初の「君よ知るや南の国」をお聴きください。

<シングル>


<アルバム1>


曲としてはほぼ同じなのに<うた>としては全然違いますね。シングルの方は前回も書きましたように幸福感に満ちた輝かしいうたです。それに対しアルバム1は翳りのあるうたです。歌われる場面は前回のオペラの場面とほぼ同じです。ここでの真理さんは、歌いすぎず抑制的でほの暗い心情を表現し、憧れが高まってもどこか儚く、遠くの光に向かって手を差し伸べるような切なさがあります。太陽の輝く南の国への憧れを歌っていますが「今は寒い北の国」なのです。このように真理さんは、それだけで完結するシングルの場合とストーリーの中のある場面で歌われる場合とをはっきり歌い分けているのです。
もうひとつ、シングルは5月21日発売ですから公演の前なのです。一方アルバムは7月1日発売ですからおそらく公演中に録音されたものと思われます。ですからシングルの方はまだ真理さんがミニヨンになりきっていなくて純粋に音楽的に表現したもの、アルバムの方は完全にミニヨンになりきって<役>としての表現になっているということも言えるでしょう。
では次にフィナーレで歌われる「君よ知るや南の国」を聴いてみましょう。

<アルバム2>


こちらも全く違いますね。まず、歌い出しが地声です。私は実際日劇でこのミュージカルを見ているのですが、40年以上たって一つ一つのうたは覚えていません。しかし、地声で歌い始めたこの曲はかなり覚えているのです。それだけインパクトがあったということですね。なぜ地声だったのか、これは聴けばわかる通りですが、身体の緊張が解けたような楽々とした印象があります。この場面は、イタリアで静養していたミニヨンが、彼女への愛に気づき後を追ってきたウィルヘルムと再会して互いの気持ちを確かめ合い、そのうえ、ミニヨンをつかず離れず見守っていた不思議な老人ロタリオが実はイタリアの貴族でミニヨンの父親だということがわかり、天にも昇るような幸せを歌うところです。真理さんの地声はまさにこの夢見るような幸福感を見事に表現しているのです。後半はウィルヘルムとの二重唱になりますが、はじめはやはり地声です。しかし、よりメリハリがついて幸福感はさらに増幅されています。「白い雲に」のあたりの美しさも印象的ですね。最後、「私は歌う」からフィナーレまでは真理さんのファルセットが全開でスケールも大きく、どんどん輝きを増してオペラのような高揚を見せて終わります。前半の陶酔から後半の高揚へ、この組み立ても見事です。

こうして聴き比べてみると、歌として完結しているシングルの場合と、ストーリーを伴うミュージカルの場合、そしてその各場面のシチュエーションの違い、そうしたことによって真理さんが実に見事に歌い分けていることがわかります。
今回この記事を書くためにオペラとミュージカルのさまざまな歌を聴き、台本も読み直す中で、トマのオペラのすばらしさが改めてわかりましたが、同時にこのミュージカルがオペラとは一味違う魅力をもったとてもよくできたミュージカルであることも再認識できました。そして何度聴き直しても新鮮な真理さんうたのすばらしさに酔うことができました。
次回はこのミュージカルのライブ版について触れたいと思います。

********************************
おまけを一つ、Youtubeでオペラ「ミニヨン」の歌をいろいろ聴いているうちに見つけたものです。このオペラで「君よ知るや南の国」に次いで有名な「私はティタニア」です。これはウィルヘルムをめぐってミニヨンの恋のライバルともなる一座の看板女優フィリーナが劇中劇で歌う歌です。不世出の(と私が考える)コロラトゥーラ・ソプラノ、エディタ・グルベローヴァの超絶技巧をお楽しみください。




リクエスト情報
NHKFM「歌謡スクランブル」
     (月~土 13:00~14:00) 
 リクエスト特集(3月予定) リクエストは番組ホームページから。
      締め切りは2月12日(日)です。


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君よ知るや南の国(1)

聴き比べシリーズ、今回は少し変わった趣向になります。
曲は「君よ知るや南の国」です。この曲は天地真理さん主演の同名ミュージカルのテーマ曲です。このミュージカルは1975年5月31日から6月24日まで約1か月にわたって日劇で上演された真理さんにとって初めての、そして唯一となった本格的ミュージカルです。
私がオークションで入手した台本によれば、スタッフは<脚本・田波靖男/演出・中村哮夫/作曲・宮川泰/作詞・安井かずみ/振付・縣 洋二>などとなっています。キャストは<ミニヨン・天地真理/ウィルヘルム・峰岸徹/ロタリオ・小山田宗徳/フィリーナ・加茂さくら/ジャルモ・友竹正則>などとなっていて、ミュージカル初挑戦の真理さんを実力も実績もある方々がしっかり支えるという充実した布陣でした。
制作は<渡辺晋・橘一郎>となっていますが、このような体制をつくり実質的にこのミュージカルをプロデュースしたのは橘一郎さんでした。その辺の事情については橘さんご自身のブログをご覧ください。(なお、その中で作詞は片桐和子さんとなっていますが、お尋ねしたところ、勘違いということでした)

このミュージカルのタイトルは《ゲーテ原作・トーマ作曲「ミニヨン」より 君よ知るや南の国》となっています。つまりゲーテの「ウィルヘルム・マイスターの修業時代」を原作とするフランスの作曲家トマ(トーマ)のオペラ「ミニヨン」を元にしているということですね。しかし、ストーリーについては大まかな筋を踏襲しながらもよりわかりやすい工夫がされているようですし、特に音楽については、テーマ曲「君よ知るや南の国」だけは「作曲:トーマ、編曲:宮川泰」となっていますが、アルバムに収録されている他の曲はすべて宮川泰作曲となっていて、ほぼオリジナルと言っていいと思います。ですからこのミュージカルは古典の風格を継承しながらそこに新しい命を吹き込んだ作品と言えるでしょう。

そこで今回はこの「君よ知るや南の国」を古典としてのトマの原曲と、真理さんが歌った宮川泰編曲版とで聴き比べてみたいと思います。
いつもと順序が逆ですが、最初に天地真理さんの歌で宮川版「君よ知るや南の国」をお聴きください。



このうたはシングル版(「初めての涙」B面)ですが、夢見るような憧れが次第に幸福感に包まれて最後はよろこびがあふれるように高まって終わります。最後の繰り返しは声楽の素養がはっきりと現れて輝かしい歌になっていますね。
ではオペラの方ではどんなふうに歌われていたのでしょう。ミニヨンを歌っているのはリュシール・ヴィニョンという人です。



曲については、前半はほぼ同じメロディーですが後半は全く違っています。印象もまるで違いますね。どういう場面で歌われているのでしょうか?あらすじを見るとわかるように、幼い頃さらわれて孤独な日々を送っていたミニヨンがわずかに記憶に残っている故郷への切ない憧れを歌う場面なのです。ですからこのように悲哀を感じさせる歌い方になっているのです。
この曲はフランス語で歌われていますので、もう少し言葉と音楽の関係がわかるように日本語字幕付きの動画を見てみましょう。歌っているのは林美智子さんで、オペラでの舞台ではなくコンサートのライブです。



これも少し印象が違います。実際のオペラの舞台でストーリーにしたがって演技する場合と、明るいライトの下で美しいドレスを着て歌うコンサートの違いもありますし、何よりそれぞれの解釈(楽譜から何を読み取り、どう表現するか)の違いがあります。それから声質の違いももちろんあります。リュシール・ヴィニョンも林美智子さんもメゾソプラノです。元々ミニヨンはオペラのヒロインとしては珍しくメゾソプラノの役なのです。ですからソプラノのような華やかさは元々無いのですが、林さんの方が少し明るい感じですね。真理さんも本来の声域はメゾソプラノですが声質はさらに明るいですね。
それはともかく、Youtubeを見るとこの曲は多くの人によって歌われていて、それぞれに少しずつ違う印象がありますからご覧になってみてください。その中で(全部聴いたわけではありませんが)私が一番気に入ったのは往年の名ソプラノ、エリザベート・グリュンマーです。(1953年録音 ドイツ語版)



この人はメゾではなくソプラノですから声が明るく輝きがあります。そして何よりメロディックに歌っています。この曲の後半は詞の意味やストーリーの上での意味を意識して”語り”っぽく歌う人が多いですが、グリュンマーはメロディーを大切に流麗に歌っています。実はそれは天地真理さんのうたの特徴でもあるのです。芝居っぽくうまく歌うよりも、音楽の自然な流れにのって美しく歌う、それが真理さんのうたの魅力だと私は思っています。そういう私の感覚とぴたりと合う名唱です。

もうひとつ、日本語の詞で歌っている動画はないかとYoutubeで探してみると1つだけありました。何と日本人として初めて欧米で認められた伝説的なソプラノ歌手三浦環(たまき)です。(1936年録音のSPレコード)



古い録音なので鮮明ではないですが言葉は聴きとれますね。この詞はたくさんの歌の訳詞で知られる堀内敬三で「君よ知るや南の国」というこの人の訳がこの曲のタイトルとして定着することになったのです。

今回はトマの原曲と真理さんが歌う宮川泰編曲版を聴き比べてきましたがいかがだったでしょうか。原曲を聴いたことがなかったという方も結構多いのではないかと思いますが、やはりとても魅力的な曲ですね。そして同時に、より親しみやすく、口ずさみやすくした宮川版の良さもお分かりいただけたのではないでしょうか。
さて次回は同じ真理さんの異なるバージョンで聴き比べてみたいと思います。


リクエスト情報
NHKFM「歌謡スクランブル」
     (月~土 13:00~14:00) 
 リクエスト特集(3月予定) リクエストは番組ホームページから。
      締め切りは2月12日(日)です。


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